福岡高等裁判所 昭和43年(う)473号 判決 1968年10月07日
主文
原判決を破棄する。
被告人を原判示第一、第三及び第四の罪につき懲役一年六月に、原判示第二の罪につき懲役四月に各処する。
原審における未決勾留日数中三〇日を右懲役一年六月の刑に算入する。
理由
本件控訴の趣意は、被告人および弁護人立川康彦提出の各控訴趣意書記載のとおりであるから、ここにこれらを引用する。
しかし、右控訴趣意(いずれも量刑不当)の判断に先立ち、原判決の法令の適用をみるに、本件勾留状は原判示第一の事実につき発せられ、同第二の事実については、その発付がないのに、原判決は刑法二一条により右第二の事実に対する刑につき、未決勾留日数中三〇日を算入していることが記録上明かである。
しかして、右各事実は原審において併合審理がなされているので、適法な勾留の効果は右第二の事実についても及ぶ関係にあるけれども、右審理の併合がなされたのは昭和四三年五月二一日であって、原判決の言渡は同年六月一八日であり、その間に右勾留につき昭和四三年六月一一日より罰金刑に対する労役場留置の執行がなされていることが記録上認められるので、右第二の事実のため勾留の効果が及び、且つこれに対する刑につき算入し得べき未決勾留日数は二一日にすぎない。したがって、原判決は右第二の事実の刑に対し算入し得ない日数(九日)を不当に算入した違法が認められ、右は刑法二一条の適用を誤ったものであって、その違法は判決に影響を及ぼすことが明かであるから、その余(量刑不当の控訴趣意)の判断を俟つまでもなく、原判決は破棄を免れない。
そこで、刑事訴訟法三八〇条、三九七条一項に則り、原判決を破棄し、同法四〇〇条但書により自判する。
原判決の確定した事実に、原判示各法令を適用し、被告人を原判示第一、第三及び第四の罪につき懲役一年六月に、同第二の罪につき懲役四月に各処し、原審における未決勾留日数中三〇日を右懲役一年六月の刑に算入し、原審及び当審における訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項但書により被告人に負担させないこととする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 塚本冨士男 裁判官 平田勝雅 高井清次)